「草競馬放浪記」に学ぶ地方競馬の楽しみ方

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「馬券を買わない」

11月19日、金沢競馬でのレース中の停電騒動。騎手3名落馬、競走馬一頭が安楽死とシャレにならない事故となりました。公正競馬の観点からも、騎手と馬の安全面からも前代未聞のトラブルです。

地方競馬の不祥事といえば、記憶に新しいのが2021年の笠松競馬の騎手・調教師などの不正馬券購入事件。ド根性名馬オグリキャップを生んだ笠松競馬の落ちぶれっぷりにがっくりきたものです。

地方競馬は賞金の金額も安く、騎手や調教師も収入的に恵まれているとはいえません。必然的にというか、必要悪的に予想の立て方にもコツが必要というかクセがあり、一見で馬券を買うのはなかなかリスキーです。

そうはいっても、最近の地方競馬場は鉄火場然としたガラの悪さはだいぶん軽減されて、ファミリーやカップルも見かけます。グルメに力を入れている競馬場も多く、馬券を買わなくても楽しめます。

作家の山口瞳も「草競馬放浪記」の巻末で競馬必勝十ヵ条の1番目に「馬券を買わない」と書いたぐらいなので、競馬場グルメを楽しみながら馬を眺めるというのもこれはこれでアリでしょう。

それにしても編集者を従え、競馬場に着けば「東京から作家先生がいらっしゃった」というので場長クラスのお出迎えがあり、貴賓室もしくは特別席からのご観覧というお大尽旅行。出版社の企画ですから、いわゆる「アゴアシ付き」でしょう。いやー、うらやましい。それで「放浪記」とかタイトル付けちゃうのは、ちょっと看板に偽りありだなあ。

住宅街のど真ん中の競馬場

山口瞳のように全国各地の地方競馬場を巡ったわけではないので言うのもおこがましいですが、浦和競馬ののどかさはかなりお気に入りです。住宅街のど真ん中にあるので、開催は基本的に日中のみ。周辺環境はいたって健全で、レース前後に公道をカッポカッポと横切る競走馬の姿も。

場内には地鶏弁当の屋台が出たり先着順で桜の苗木が配布されたり、ローカル感満載。場内には埼玉県の特産品を売るショップもあって、埼玉県のマスコット「コバトン」のグッズもあります。「コバトン」は埼玉県の県鳥シラコバトをモチーフにしたマスコット。シラコバトは映画「翔んで埼玉」の”しらこばとポーズ(埼玉ポーズ)”のもとになった鳥でもあります。

埼玉県マスコット「コバトン」騎手バージョン

コバトンの反射キーホルダーを見るたびに買おうかと迷い、ちょっとデカすぎるのと強気のお値段にひるみ、いつも買わずに通り過ぎるのでした。

客のいない昼下がりの食堂で、地粉うどんをすすりながらモニターのレースをぼんやり眺める、このうらぶれ感がたーまりーません(かなり偏向した楽しみ方だ)。コロナ禍以降行っていないので、新しいスタンドができたり浦和競馬場も変わっていることでしょう。(※うらぶれ感とか書きましたが、浦和競馬を含め南関4場は儲かっているらしい。)

金沢競馬で寿司を食べたい

というわけで、金沢競馬の停電ニュースを聞いて思い出したのが、金沢競馬場内の寿司屋が安くておいしいという噂です。馬券を買いたいとはさらさら思わないのですが、寿司を食べるために金沢競馬場に行ってみたい。別に競馬場に行かなくても金沢には安くておいしい寿司屋がいっぱいあるでしょうが、あえて金沢競馬の寿司屋というところに妙な魅力を感じます。

中央競馬にも地方競馬にもいろいろ思うところがあって以前ほど競馬が楽しくないのですが、競馬ファンの端くれとしての血が騒ぐようで、寿司×競馬場という組み合わせはとても魅力的です。

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