声優の田中敦子さんの訃報が入ってきました。享年61。若すぎる。声優業界には全く詳しくないのですが、田中敦子さんの名前はアニメ「攻殻機動隊」の主役、草薙素子(通称:少佐)の声優として、鮮明に記憶に残っていました。
「攻殻機動隊」はかなり好きなアニメで、「STAND ALONE COMPLEX」から「笑い男」までのシリーズは繰り返し見たものです。そのきっかけとなったのが、「攻殻機動隊」の劇場版、映画「イノセンス」(2004年)でした。
押井守監督による当時最先端のCGを使ったアニメ映画として話題になっていて、それまで「攻殻機動隊」は全く知らなかったのですが、映画館に足を運びました。結果、大正解でした。「イノセンス」は、なるべく鮮明な大画面と、上質な音響設備で見るべき映画です。
精密なCGがこれでもかという大画面で迫ってくるのは圧巻でした。
相互に影響しあうサイバーパンクの世界観
「攻殻機動隊」といえば、あの「マトリックス」(1999年)のウォシャウスキー兄弟もとい姉妹が影響を受けた作品としても有名です。
そして「イノセンス」の近未来の中華街のような世界観は、「ブレードランナー」(1982年)を思い出させます。
「ブレードランナー」を草分けとして、続く「マトリックス」も「攻殻機動隊」もサイバーパンクの名作ですが、それぞれ影響を受けつつも決して模倣にはならず、唯一無二の存在感を確立しているのが名作の名作たるゆえんです。
採掘場で録音したオルゴールの音色
「イノセンス」は音楽にも相当なこだわりをもって作られていて、当時、インタビューで押井監督が音楽担当の川井憲次氏と二人で、冬の夜中に採石場にオルゴールを持ち込んで録音したと語っていたオルゴールの音色も摩訶不思議な幻惑的な音色で、聞きどころのひとつです。
なんでも岩に囲まれた洞窟のような採石場は音の反響が独特だそうで、それを録音したかったとのことでした。
それにしても、少佐の声の主が亡くなってしまった……。毅然とした強さのなかにも艶があって、草薙素子のイメージにぴったりでした。「攻殻機動隊」に欠かせないピースが一つ失われてしまったようで、とてもショックです。ご冥福をお祈りします。