スパイドラマ&映画あれこれ

よく日本は「スパイ天国だ」と言われますね。諜報活動を処罰する法律がないのでそう言われるわけですが、世界に目を向けてみれば丁々発止、あっちの国でもこっちの国でもスパイ罪で捕まえたり、捕まえられたりしてますな。ゆるゆるの我が国では、海千山千の各国のスパイ達は鼻くそほじってても仕事ができるんじゃなかろうか。

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「MI-5 英国機密諜報部」

インテリジェンスのご本家、イギリスはBBC製作のドラマ「MI-5 英国機密諜報部」(2002~2011)なんかを見ていると、かなりリアルな現代のスパイの横顔が垣間見えます。スパイといえば古くは「007」シリーズに代表されるような、エンタメに振り切ったどっしゃーん、がっしゃーん、お決まりの美女登場! みたいな派手な映画も楽しいのですが、しょせん絵空事というかフィクション感ありありです。

「MI-5 英国機密諜報部」の緻密な脚本で描かれる現代のスパイたちは、フィクションはフィクションでも妙にリアルで、同時代を生きている人間の息遣いを感じます。

彼らは現代のスパイですから、どっちかというと普段は官僚っぽい。優秀です。現場組は腕も立つ。嘘をつくのも仕事のうち、なんなら仲間内でも化かし合う。でも、そんな彼らも当たり前ですが、日常生活を送っている。人事や何やら、組織内のアレコレもある。家族のこともある。この辺のバランスもいい感じにリアリティを出しています。

そして、そんな三拍子も四拍子もそろった優秀な彼らが、じゃんじゃん死んでいくんですよ。もちろん任務絡みで。現場組だけでなく、内勤組も容赦なく刈られます。ああ、もったいない。シーズンが長い(全10シリーズ)のでキャスティングの都合もあるのでしょうが、どこに落とし穴があるかわからない生き馬の目を抜く業界ですからの。現実にもそういうことがないとはいえないでしょう。怖い怖い。

「HOMELAND」

お次はアメリカさんのCIA。「HOMELAND」(2011~2020)はCIA所属の主人公・キャリーを軸にドラマが進んでいくので、「MI-5 英国機密諜報部」が群像的なのに対してヒロインがはっきりしていますが、こちらもなかなかリアリティのあるスパイドラマです。

実はねじねじ草、まだ最後まで見ていません。つまらなくて脱落したのではなく、FOX CRIMEでリアルタイムで見ていたのですが、シーズンの変わり目に間が空いて(本国で撮影中)、気がついたら新シーズンが始まって置いていかれた記憶。確かシーズン6まで見たな。2020年にシーズン8で最終回を迎えたそうなので、そのうち通しで見るつもりです。

主人公・キャリーを演じるクレア・デインズの演技がよいです。キャリーは双極性障害で本人も苦しんでいるのですが、一方でなかなかのサイコっぷりを発揮するので、シーズン半ばになってくると話の筋よりも「このキャリーっていう人間は一体どういう人間なんだ」と、そっちのほうが気になってきます。いやもう無意識の雌カマキリというかなんというか、彼女に惚れた男たちは大変です。

「リクルート」

CIAの研修風景が興味深かったのが、映画「リクルート」(2003)。終盤は「ハア?」と拍子抜けするような結末で終わるのでおすすめはしませんが、アル・パチーノがコリン・ファレルをスカウトしてスパイとして仕込んでいくあたりがなかなかリアルで面白かった。

「THE GAME」「裏切りのサーカス」

もいっちょ、BBC製作のドラマ「THE GAME」(2014)。東西冷戦時代のスパイの攻防を描いた、こちらもなかなかの良作です。ドラマとしての出来もいいですが、主演のトム・ヒューズがかっこええ。つーか、トム・ヒューズの演技しか頭に残っていません。あ、繰り返しますが、脚本もいいです。

冷戦時代はやっぱりスパイ活動華やか(?)なりし頃だったんでしょう、映画「裏切りのサーカス」(2011)も英国を舞台にした二重スパイをあぶりだす話です。出演者はゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチなど豪華絢爛。ですが、映画という時間的制約のせいでしょうか、「MI-5 英国機密諜報部」「THE GAME」に比べるとちょいと物足りない印象を持ちました。

↓「裏切りのサーカス」の原作はジョン・ル・カレのこちら。↓

スパイものは好き嫌いが分かれるジャンルだと思いますが、ねじねじ草は割と好きです。伏線だらけなので頭をフル回転させて見ないと面白さが半減するという難点はありますが、頭の体操的にもいいのではないかと。フィクションとはいえこれらを見るにつけ、いや~、スパイはアホでは務まりませんわとつくづく思うのであります。

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