怪異備忘録② 出先であったトイレの怪

明けました2024年。元日に能登の震災、2日に羽田で飛行機炎上と波乱の年明けとなりました。こんな不穏な正月はこれまで経験したことがない。これ以上荒れないことを祈るばかりです。

さて、前々から書こうと思っては忘れていた「トイレの怪」。なにも正月早々書くネタでもないですが、ヒマなので忘れないうちに書いておきます。まさに備忘録。

水場というのはいろいろ霊的なものが寄ってきやすいそうですが、出先のトイレで怖い思いをしたというお話。

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無人の個室のカギが必ずガチャリと鳴るトイレ

板橋にある某オフィスビル。仕事で月に1、2回の割合で、会議室を借りて丸一日作業することがありました。日に何回かはトイレを借りるわけですが、いつの頃からか、手を洗ってトイレを出ようとするタイミングで、だれもいないはずの個室のカギが必ず「ガチャリ」と鳴る。

そのビルに通うようになってから数年経っていたのですが、前はそんなことなかった。いつ頃からか、それはもうはっきりと「ガチャリ」と鳴るようになりました。

最初の1、2回は途中で引っかかっていた金具がドア開閉の振動で動いたのかなと思ったのですが、行くたびに、しかも同じようなタイミングで鳴るとなると偶然とは思えない。それにそんな軽い音ではない。

「あ、今回は鳴らないな」と思っていると、必ず「ガチャリ」。しまいにはトイレに行くのが憂鬱になりました。今はそのビルに行くこともないので、その後はどうなっているのか知りません。

ドアの前を往復する人影

お次は、豊洲にあるオフィスビル。一帯はタワーマンションがにょきにょき生えて、住民も若いファミリー層が多い小綺麗な街です。が、高層住宅が多いせいか、地上を歩いていてもあまり活気は感じない不思議な街です。

その豊洲にある新しいオフィスビルのトイレの話。照明がセンサー式なので無人のときは真っ暗。別にそれ自体は珍しくもないので気にせず暗闇に突入すると、暗めの照明が点灯し、個室で用を足していたわけです。

するとドアの下のわずかな隙間から、まるで誰か通ったような影が左から右(トイレの入口方向から奥に向かって)移動したような気がする。でも、足音がしない。ドアを閉める音もしない。

「?」と思ったものの、なにしろ薄暗い照明なので気のせいかとスルーしていたところ、今度は右から左に(トイレの奥から入口に向けて)影が通り過ぎた。「??」ちょっと違和感を覚える。

そして3度目。また左から右へ影が通り過ぎた。「?!」さすがにおかしい。何者かがドアの前を往復している。足音もなしに。

ここでサーッと血の気が引いて慌てて用を済まして手を洗い、逃げるようにトイレを飛び出したわけですが(もちろんトイレにはほかに誰もいない)、オフィスの入口ですれ違ったおじさんがびっくりしたようにこっちを見たので、よほど血相を変えていたのでしょう。

豊洲の夜景

この話には続きがあって、その日はだだっ広いオフィスの一角を借りて仕事をしていたのですが(フリーアドレスというやつで固定のデスクが決まっていないスタイルの会社)、トイレから戻って間もなく少し離れたところで女性数人がおしゃべりしているのが聞こえてきた(デスクのパーテーションがあるので姿は見えない)。

そのうちの一人が「これね、盛り塩作ってるの」と言っている。周囲は「へー」って感じで反応は薄い。その人は「このあたりは関東大震災のがれきを埋め立ててできた土地だからね」と意味ありげに続ける。

「盛り塩、きれいにできたでしょ」とかなんとか、さかんに盛り塩というワードが聞こえてくる。思い過ごしでなければ、その人はわざとこちらに聞こえるように話しているようだった。

げー。まるで今さっきトイレであった異変を察知しているみたいだ。もしかしたら何か連れてきちゃったか? 「何か見えているんですか」と聞きたかったけれど、一面識もない人にさすがにそんなことを聞く勇気はなかったっす。

でも、あの人は多分そういうものがわかる人で、普段からいろいろ対策していると見た。よってトイレの影はねじねじ草の気のせいではないという結論に至ったのでした。おしまい。

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