「日本沈没」を読み返す

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まるで予言の書

昨日は雲が多かったので、日が陰っているうちに買物に出かけようと支度をしたら、太陽がニヨニヨと顔を出したので、たちまち出かける気をなくしました。

日が照っているのと陰っているのでは体感温度は大違い。この日射しの中を歩く気にはならんな~とあきらめ、買物難民ねじねじ草は小松左京の「日本沈没」を手にとりました。

スキマ時間にちょっと読み返すつもりがつい引き込まれてしまい、これは本格的に読み直すことになりそうだ。

”気象庁は冷夏を予想していたのに、梅雨明け前後から急に暑くなりはじめ、このところ連日、三十五度を越す異常な暑さだった。東京、大阪では暑さで病気になるものや、死ぬものさえ出ていた。”

どうですか、この描写。梅雨明け前後どころか7月上旬から猛暑が始まったという点が違うものの、今年の夏と重なります。今年も気象庁、ちらっと冷夏とか言っていたような。すぐに撤回したようですが。

「日本沈没」の初版が出たのが1973年。気象庁のホームページで1973年からざっと過去5年ぐらい遡って東京の8月の最高気温を見てみたら、猛暑日(35度以上)は例年8月に2~3日ってところです。小松左京としては連日35度というのはかなりの異常気象として描いたのでしょうが、いまやリアルになってしまった。熱中症で死者が出るというのもしかり。まるで予言の書のようではないですか。

映画化2回、ドラマ化2回

構想9年、当時最先端の地球物理学のデータを収集・解析し、学者の助言を仰いで積み上げた裏付けの説得力たるやハンパねえっす。小松左京自身も「日本沈没」というぶっ飛んだストーリーにいかに説得力を持たせるかに苦労して、9年の歳月が経ってしまったと書いています。苦労の甲斐あって一級のSF作品に仕上がりました。

これまで1973年と2006年に映画化、1974年と2021年にドラマ化されています。1973年(出演:小林桂樹、丹波哲郎、藤岡弘など)の映画をぜひ見てみたい。東宝の特撮部隊がかなり頑張った作品ということで、特撮マニアの方にも見どころがある作品ではないでしょうか。

2021年のTBSのドラマ版(「日本沈没ー希望のひとー」主演:小栗旬)は途中まで見ましたが、脱落。主人公が官僚っていう設定がもうアカン。

役人や、役人あがりは、いつも猿がボスを決める時のように、上に乗るか乗られるか、という奇妙な権力闘争ばかりやっている。

”最終的に、一番かしこい、一番えらい人間は自分たちだと思っとる。そのえらさは、役所の序列で決まると思っとる。”

原作での官僚(元官僚を含む)像はわりと辛辣で、おそらくモデルがいたのではないかと思うのですが、官僚あるあるの小賢しさ、保身のうまさがリアルに描かれています。制作陣はドラマ化するにあたってそこのところをどう考えたのかなっと。

官僚を主人公に据えたことで、ドラマがえらく薄っぺらくきれいごとに仕上がっていたような印象があります。最後まで見てませんが。原作で小栗の役っぽい人物出てきたっけ。

まあいいや。「日本沈没」、じっくり再読したいと思います。

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