フィギュアスケートTV観戦記(1)~渾身の仮面舞踏会~

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優雅なワルツ。だがしかし、過酷なプログラム

ぼちぼちフィギュアスケートのシーズンが始まりました。浅田真央ちゃんが引退してからめっきり観戦意欲がトーンダウンしているものの、地上波で放送しているときはなんとなく見ています。

昨日、グランプリシリーズの第2戦カナダ大会の放映があったので流し見していたら、懐かしい仮面舞踏会の曲が。真央ちゃんが2008-2009シーズンにフリープログラムで使った曲です。

滑るのは韓国男子のチャ・ジュンファン。ルックス、技術、華を兼ね備えた注目の若手選手です。ほうほう、彼の滑る仮面舞踏会はどんなもんかと、画面に集中しましたよ。

ハチャトゥリアン作曲の優雅だけれど短調の重々しいワルツ。ちゃんと三拍子刻んでてなかなかええやんけ。シーズンが始まったばかりなのでちょっと滑りこなせていない感はありますが(これは他の選手も同じ)、なかなか攻めた内容でした。

このカナダ大会、日本からは山本草太、友野一希、三浦佳生と層の厚い布陣だし、イタリアのマッテオ・リッツォもいるし、チャ・ジュンファンも守りの演技をするわけにはいかない。

で、今日のチャ・ジュンファンの仮面舞踏会を見るにつけ、きちんと三拍子のリズムを刻みながら高難度のジャンプ・ステップを入れていくのは、ショートプログラムでさえ並大抵のことではないのだなと。

狂気さえ感じた高難度構成

タラソワコーチが真央ちゃんに振付けた仮面舞踏会は、終盤のステップが男子でもキツイ「鬼ステップ」と言われていました。演技時間の長いフリーでトリプルアクセルを二つ跳んだ後、最後の疲労MAXのときにリンクの端から端まで、要素てんこ盛りのストレートラインステップを踏ませるという、まさしく鬼のような構成。

タラソワさんもタラソワさんですが、それを滑りきる真央ちゃんも真央ちゃんです。職人と天才のぶつかり合いというか、狂気さえ感じる高難度構成でした。もちろん、タラソワさんは「真央ならできる」と見込んでのことでしたが。

あれはNHK杯だったか、黒い衣装に身を包んだ真央ちゃんがリンクに滑り出していったときの悲壮感さえ漂う背中には、なにか胸を衝かれるものがありました。

あの頃、執拗にトリプルアクセルの回転不足をとられて、精神的に追い詰められていたのではないでしょうか。確かに回転不足の時もあったのですが、回りきった時も不可解に減点されたりして、解説者も思わず「今のは足りていたように見えましたがねぇ」と漏らしたこともあったっけ。

タラソワコーチも「そんなに回転不足をとるのなら、審査員の目の前で跳んでおやりなさい!!」とキレて、審査員席の前でトリプルアクセルを跳ぶ構成にしたはず。いや、タラソワさんは間違いなくドSです。

採点競技というのはなかなか闇が深いです。フィギュアスケートはもはやスポーツとしてはオワッテルという人もいます。コロコロ変わるルールやあいまいな判定にもくさらず、真摯に競技に取り組んでいる選手たちには心から敬意を表したいと思います。

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